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「ガバナンス不全」に陥る組織の特徴とは ー社会福祉法人として考えたいことー

大手企業の不正会計や品質偽装のニュースを目にするたびに、「なぜあれほど立派な仕組みを持つ組織で、不正を止められなかったのか」と感じる方も多いのではないでしょうか。実はこうした問題の多くは、制度が「ない」ことではなく、制度はあるのに機能していない「ガバナンス不全」という状態から生まれています。これは、上場企業だけでなく、理事会や評議員会、監事といった機関を備える私たち社会福祉法人にとっても、決して他人事ではないテーマです。今回は、組織がガバナンス不全に陥るときに共通してみられる特徴を整理し、私たち自身の運営を振り返る機会にしたいと思います。

目次

ガバナンス不全とは何か

ガバナンスとは、本来「組織を統治し、経営陣の判断を監視・牽制する仕組み」を指す言葉です。株式会社であれば取締役会や監査役、社会福祉法人であれば理事会・評議員会・監事がその役割を担います。ガバナンス不全とは、こうした機関が形式上は存在していても、実質的なチェック機能を果たせなくなった状態のことです。

過去に世間を騒がせた企業の不祥事を振り返ると、社外取締役や委員会を設置し、体裁としては立派な統治機構を備えていた組織が少なくありません。それでも不正を止められなかったのは、機関が「置かれているだけ」で、都合の悪い情報が伝わらず、実質的な監督・牽制の役割を果たしていなかったためです。多くの教訓が示すのは、「制度がなかったから起きた」のではなく、「制度はあったのに、中身が伴っていなかった(形骸化していた)から起きた」という事実です。

社会福祉法人においても、2017年の社会福祉法改正により、評議員会の必置化や監事の権限強化など、ガバナンスの仕組みは大きく整備されました。しかし、仕組みが整うことと、それが実際に機能することは別の話です。だからこそ、私たち自身の組織運営を、他分野の教訓に照らして点検してみる意味があると考えています。

陥りやすい4つの特徴

1. トップへの権限集中と意思決定の属人化

理事会や会議の体裁は整っていても、実際には「トップの一声で決まる」「出席者は追認するだけ」という状態です。判断の基準がその都度のトップの意向に委ねられ、言語化・共有されないため、誰が担当しても同じ結論に至る「再現性」が失われます。現場は物事の是非よりも「上がどう考えるか」を優先して動くようになります。

2. 内向きの組織風土と同調圧力

社会一般の常識や倫理よりも、「身内の論理」や組織防衛を優先してしまう風土です。特定の部署や拠点が本部から孤立し、独自のやり方を「ここではこれが普通」として聖域化させたり、昇進・評価を気にするあまり、周囲に同調して問題を見て見ぬふりをしたりする状況が生まれます。

3. 制度の形式的導入と運用の質の低さ

外部の目を入れる委員や第三者機関を設けても、「設置すること」自体が目的化してしまい、実質的な監督機能を持たせられていないケースです。都合の悪い情報が監視役に伝わらなければ、どれほど立派な肩書きの人を迎えても、チェックは機能しません。

4. 内部通報制度の機能不全

通報の窓口はあっても、通報者が特定される、対応がうやむやにされる、あるいは異動や退職に追い込まれるといった不利益を恐れ、誰も声を上げられなくなっている状態です。安心して声を上げられる「心理的安全性」がなければ、制度は存在するだけの飾りになってしまいます。

私たちが大切にしたいこと

こうした特徴に共通するのは、「制度の有無」ではなく「制度を実際に機能させる姿勢」の問題だという点です。私たち社会福祉法人にとっても、理事会・評議員会・監事という仕組みを、名目だけの機関にせず、率直な意見や異論が言い合える場として機能させ続けることが欠かせません。

具体的には、経営層自身が率先して誠実な姿勢を示すこと(いわゆる「トーン・アット・ザ・トップ」)、判断の理由や経緯をできるだけ言語化し、特定の個人の考え一つで物事が決まらないようにすること、そして現場の職員が気づいたことを、立場や評価を気にせず安心して伝えられる環境、すなわち「心理的安全性」をつくることが欠かせません。監事や評議員には、耳の痛い情報こそきちんと届く仕組みと、それを遠慮なく発言できる独立性が求められます。

恵光会は、利用者の皆さまやご家族、地域の皆さまからの信頼のもとに事業を続けさせていただいている法人です。その信頼にお応えし続けるために、制度を「作って終わり」にせず、実効性のあるガバナンスとは何かを、今後も職員一人ひとりとともに考えていきたいと思います。


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