【人間関係とコミュニケーションの難しさ】
組織の中で人間関係をうまく築き、コミュニケーションを円滑に進めることは簡単なことではありません。
しかし、その方法の一つとして「相手の意見に一歩引いて考える」ことが大切だと私は考えています。
皆さんも経験があるかもしれませんが、会議の場や打ち合わせの際に、自分の意見が相手に伝わらない、逆に相手の意見が理解できないという状況に遭遇したことはありませんか?
そういった場合、一方的に自分の意見を押し付けたり、相手の意見を否定的に受け止めてしまうと、お互いに空しい応酬を繰り返すだけで、何も生産的な結論は導き出せません。
【相手の意見を受け止める姿勢の大切さ】
組織内での人間関係をスムーズにするためには、まず相手の立場に立ってその意見を受け止める姿勢が何より大切です。
相手の発言の背景にある考え方や、それが根付いている経緯や事情に思いを馳せてみることで、相手の言葉の奥にある本当の意図をくみ取ることができるはずです。
【具体例:部下からの人員増強要求】
例えば、部下から「業務が過剰なので、人員を増やしてほしい」という要望が出た場合、上司である自分としては「人件費がかさむのでなかなか難しい」と一蹴してしまいがちです。
しかし、その部下の発言の背景として、現場が人手不足で大変な業務量に押し潰されているという実情があることに気づけば、この要望の重大さが分かります。
部下の発言には、単に人員を増やしたいという要求以上の、過酷な労働環境からの訴えが含まれている可能性があるのです。
【Win-Winの解決策を導く】
こうして相手の言葉の裏側にある本当の意図を理解した上で、自分自身の経験則に照らし合わせても構いません。
例えば経営側の事情から人員増強は難しいと判断したとしても、業務の効率化や外注の活用などで、部下の負担を少しでも軽くできる方策を一緒に見出せるかもしれません。
要するに、相手の意見に一歩引いて考えることで、Win-Winの解決策を導き出すチャンスが生まれるのです。
【引き継ぎや申し送りの場面でも有効】
また、「一歩引いて考える」ということは、人事異動の際の引き継ぎや、プロジェクトの前任者との申し送りなどの場面でも重要です。
引き継ぎを受ける立場で、なぜこの方針がとられていたのか、一歩引いてその背景にある事情を考えることで、前任者の意図をよりよく汲み取れるはずです。
【相手の立場の理解が不可欠】
組織の中にはさまざまな立場の人がいて、それぞれが抱えている課題や制約、事情は異なります。
そういった相手の立場をよく理解しようと努めることで、言動の奥にある本質的な部分を把握でき、お互いの考えや意見の食い違いが生じにくくなるのではないでしょうか。
【一方的な受入れは注意が必要】
ただし、相手の意見に一歩引いて考えるということは、全てを一方的に受け入れろという意味ではありません。
適切で建設的な意見や提案には素直に耳を傾けるべきですが、暴言や差別的な発言、法令に反するような主張などに対しては毅然とした態度で対処する必要があります。
相手の立場を尊重するあまり、自身の価値観や組織の方針を曲げてはいけません。
【「一歩引いて考える」姿勢の重要性】
組織の中で人間関係を円滑に保つにはさまざまな方法があるでしょう。
でも、その原点として忘れてはいけないのが、コミュニケーションの際に「相手の意見に一歩引いて考える」という姿勢だと私は考えています。
相手の本音に思いを馳せ、お互いの立場を尊重し合うことで、生産的な議論や、Win-Winの解決策が見出せるはずです。
組織の中で良好な人間関係を保ち、コミュニケーションを円滑に進めるためにも、この姿勢は欠かせません。
